『悲円 -pi-yen-』のLv。UP(レペルアップ)
Co-program2025 カテゴリーA 採択事業
2026年1月23日〜25日開幕 新NISA批評演劇『悲円 -pi-yen-』 関連企画
『悲円 -pi-yen-』のLv。UP ーレペルアップー
かつて東京でひそかに伝説となった 新NISA批評演劇『悲円 -pi-yen-』
でも本当のクライマックスは、まだ来てなかったぺ…!
目指すは、演劇の都・京都。
でもそこで上演するには、レペル(Lv。)100にならなきゃなんだぺ!🥺
最強の演出家と劇作家を仲間に加えて、
『悲円』をさらに面白く、最高に仕上げるレペルアップ企画!
Lv。UP 〈演出編〉第二弾
Lv。UP第一弾:私道かぴ(安住の地)さんによるWSに続き、第二弾は『悲円 -pi-yen-』の戯曲(本編)を使ったWSです!
※予想獲得レペル:15Lv。(レペ)
「『悲円 -pi-yen-』の台本をカタチから読んでみる!」
WS講師:山口浩章(このしたやみ)
『悲円 -pi-yen-』 は句読点の有無、改行の仕方などが特徴的な台本です。そこで、 普段のように台本に書かれている意味や関係性からではなく、台本の形からシーンを立ち上げる試みをしてみようと思いました。いつもとは違う演技の組み立て方をしてみませんか?
山口浩章
日程:
8/8(金)17:30〜21:30
8/9(土)14:00〜18:00
※WSは同内容を実施
参加費:各回2,000円
※当日受付にてお支払い。
ご予約はこちらから(Google form)
山口浩章さんプロフィール
演出家:京都芸術大学舞台芸術学科教授 劇団このしたやみ代表
立命館大学在学中に学生劇団で演劇を始める。2005年より演出家としての活動を専門にし、2007年『このしたやみ』を結成。2009年より大阪大学大学院にて演劇学を専攻、2010年修士号を取得。2011年の利賀演劇人コンクールにて優秀賞を受賞。
2013年よりロシア、サンクトペテルブルク国立舞台芸術アカデミーのマギーストラトゥーラの一期生として留学、2015年学位を取得し帰国。
Lv。UP 〈演出編〉第一弾
ー終了しました ご参加ありがとうございましたー
Lv。UP第一弾は、私道さんによる『悲円 -pi-yen-』の戯曲(冒頭詩)を使ったWSです!
※予想獲得レペル:15Lv。(レペ)
「『悲円 -pi-yen-』の冒頭詩であそびながら、
観客の身体感覚を劇世界へいざなう冒頭シーンをつくろう!」
WS講師:私道かぴ(安住の地)
劇の演出をつける上で、私が最も大切だと意識しているのは冒頭です。観客を現実のいそがしい世界から、劇世界といざなう大切な時間として、冒頭のシーンをつくることを心がけています。それは、「劇場の身体感覚」を整える手助けをする時間とも言えるかもしれません。視界を暗くして、目を一旦まっさらにする。音をゆっくりと無くして、耳に静寂を聞かせる。勿論この他にもやり方は無限にあると思いますが、私はゆっくりと舞台上と客席の身体感覚を調整していくようなこの時間がとても好きです。
ぺぺぺの会『悲円 -pi-yen-』に冒頭詩があると知った時、そしてその初めの言葉が「かぐわしい葡萄のかおり」だとわかった時、「このお芝居はきっと観客の身体、ひいては客席全体を大切にする作品だろうな」と思いました。そして、この冒頭の文章を客席の身体と共有しようとしている俳優の仕草がとても見たいと思いました。
かおりって演技でどうやって表すのだろう、何度も出てくる「内側は見えまい/内側でなにが起きているのか」という言葉をどうやって一緒に立ち上げよう、そう思いながらわくわくしている自分がいました。今回のワークショップでは、この冒頭詩を味わいながら、観客をいざなう装置として形にしたいと思っています。正解のわからない私とあなたで、一緒にこの冒頭詩で遊んでみませんか。
私道かぴ
日程:
7/4(金)18:00〜22:00
7/6(日)13:00〜17:00
※WSは同内容を実施
参加費:
各回2,000円
※当日受付にてお支払い。
ご予約はこちらから(Google form)
ー第一弾の応募は終了しましたー
私道かぴさんプロフィール
劇作家、アーティスト。京都を拠点に活動する団体「安住の地」所属。身体性を強く意識した演出と、各地に実際に滞在し聞いた話を基に作品をつくる。2023年度 ACYアーティスト・フェロー。脚本・演出を担当した短編演劇『アーツ』が第16回せんがわ演劇コンクールにてオーディエンス賞を受賞。製糸工場の工女をテーマに女性の一生を描いた『かいころく⁻工女編-』で第11回北海道戯曲賞大賞受賞。
ぺのひとより レペルアップの手応え
作演出:宮澤大和より
7月のレペルアップ企画では、劇作家・演出家の私道さんによるワークショップを開催する、またとない機会に恵まれました。
豊岡演劇祭で上演された『かいころく』を観劇してから、私道さんの創り出す世界のファンになりました。ぼくにとって、その創作の源泉に触れることは、大きな喜びと学びの連続でした。
この貴重な経験から得た知見を、『悲円 -pi-yen-』の京都再演へどう活かしていくか、この文章を書きながらじっくりと考えをまとめていきたいと思っています。
*
私道さんの作品に強く惹かれた、いちばんの要因は、俳優の身体からほとばしる圧倒的なまでの「熱量」でした。その熱量の源は、セリフでありながら「詩」と呼びたくなるような、研ぎ澄まされた私道さんによる言葉たち。
いったいどのようにして、あの凄まじい演技を俳優と共に創り上げているんだろう。
と気になっていました。その創作のプロセスを目の当たりにできることに、心の底から興奮していました。
ワークショップでまず印象的だったのは、私道さんが俳優の主体性を最大限に尊重する姿です。テキストをどう解釈し、どんなシーンを立ち上げるか。その大部分が俳優たちにゆだねられ、俳優が対話し、身体を動かしながら創造していく時間がごく自然に流れていきます。そして、俳優たちの創作が熱を帯びてきたまさにその瞬間、すっと近づき、言葉をかける――
その言葉の多くは、俳優を力強くエンパワーするものでした。「その道で間違いない」と保証し、道を迷いなく突き進むための的確な助言を与える。しかし、ぼくが真に衝撃を受けたのは、ただ勇気づけるだけでは終わらない点でした。
俳優たちがつくりあげたシーンに対し、私道さんは演出家として「こうあってほしい」という明確な意思を、一切の妥協なく伝えます。そうすることによって、たとえ積み上げてきたものを一度「壊す」ことになったとしても。
それは「妥協がない」というよりも、演出家が批評家や観察者としてではなく、ひとりの当事者として、その場に「居合わせている」ことの証明だったと思う。
ぼくはこれまで、演出家として、意思を持たないことを意思としてきていたから、俳優がつくりあげてきたものがたとえ自分の想定と多少異なっていたとしても、今、眼の前で起こっていることを受け容れるようにしていました。但し、俳優やスタッフから「もっと意見を言語化してほしい」というフィードバックを受けたこともあります。クリエーションの現場における自身の在り方を今一度考えたいと思っていました。だからこそ、強い意思をもって創作の場に立つ私道さんの姿は、ぼくにとって大きな刺激になりました。
また、私道さんとは、同じ劇作家として、劇作についても話を伺いました。私道さんは、小説を書く際も常に俳優(登場人物)の具体的な動きを想像すると言います。
一方、ぼくは自らの想念を頼りに内へ内へと潜っていくため、時に他者の存在が希薄になりがちです。ぼくの文章が、読者との共鳴を起こしづらいことがあるのはそのためかもしれません。戯曲や詩という形式を自分が必要としているのは、そうした自分の言葉を、自分自身から切り離し、客体化するためでした。
私道さんの劇作の根幹が、他者になりきる「演劇」そのものであるならば、ぼくの場合は「文学」や「哲学」にある。この違いを再認識できたことも、大きな収穫でした。
俳優:佐藤鈴奈より
2チームに分かれて冒頭詩を立ち上げていくワークをやりました。まず作ってみて発表し、各チームで感想を言い合って、再度つくっていくという、シンプルな構成だったのですが、両チームの1回目と2回目の発表が全く異なっていたので驚きました。
根底にあるものは変わっていないのですが、その遊び方の幅が、2回目のほうが、ぐんと広がっていったのです。
それは、私道さんが「壊していきたい」とディレクションしてくれたからだと思います。
1回目を良くしていく、ではなく、壊していくという言葉は、完成ではなく可能性(あそび)を広げていこうと言われている感じがして、わくわくしました。
また、ただ壊すだけではなくて、チームや個人に課題を渡して、負荷をかけたり方向づけをしたりすることで、そこを頼りに1回目とは違うあそび方で遊んでいたので、見ていても、やっていても楽しかったです。
今回のWSでは、同じ冒頭詩を使って、いろんな人のあそび方を知ることができました。
どう読むのか、どこでどう動くのか、何を見ているのか、どんな音なのか。硬いのか柔らかいのか。速いのかゆったりしてるのか。
稽古となると、どうしても作品を完成させようとして、その中だけでの実験になってしまうのですが、今回のWSのように、完成や正解を求めない時間を作ることで、皆がどのようにあそぶ人なのかを知ることができる機会になると思いました。
京都公演は初めてご一緒する方もいるので、東京公演とはまた違ったあそび方を見つけたいです。
俳優・制作企画:石塚晴日より
そもそも、なぜ「『悲円 -pi-yen-』のレペルアップ」を企画したのかについてお伝えします。
ぺぺぺの会は、これまでの5年間で、10以上の作品を上演する機会に恵まれました。
結成初期は宮澤が書く詩を演劇にする「詩の演劇」、中期は小説を演劇にする「小説の演劇」、そして最近ではインタビューやリサーチにより他者の言葉を取り入れた演劇を作っています。
特に初期〜中期にかけては試行錯誤の連続で、ぺぺぺの会ができること、ぺぺぺの会にしか作れない演劇とは何なのだろうと、様々なアウトプットの方法に挑戦しました。
そして遂に、『悲円 -pi-yen-』の上演で、ぺぺぺらしさをちょこっとだけ掴んだような気がしたのです。
時事的なテーマとチェーホフ戯曲の意外な掛け合わせや、戯曲や上演に答えを明示せず、創作過程や上演後の座組メンバーや観客との対話でその人だけの答えを見つけていく上演方法、観客に言葉を的確に届けつつ、間を多用した演出により解釈の余白をつくること、骨太な戯曲と真面目でナンセンスな演出のマッチングなど、誇らしい私たちらしさがたくさん見つかりました。
「『悲円 -pi-yen-』のレペルアップ」企画は、そんなぺぺぺらしさに共感してくださる人と出会うために作りました。
私たちらしさは、いつも共感と対話と共にあり、作品作りを共にしてくれた・上演を見た・戯曲を読んだ・私たちに出会った誰かが認めてくれたから生まれたのだと思っています。
そして、すでにそれぞれの自分らしさを持っている演出家・劇作家の人と出会うことで、さらなるオリジナリティの言語化や、演出や戯曲についての他の選択肢を知り、現在のぺぺぺらしさを選択した理由を探るために、WS形式で行うこととしました。
そして、レペルアップ企画を通して、共感する人と出会うだけでなく、私たちも、それぞれがもつ自分らしさに共感していきたいです。
私道さんにWSをお願いしたのは、2025年に東京と京都で上演された『暗室』を拝見したことがきっかけでした。
『暗室』は、写真現像にまつわるエピソードを扱った作品です。その劇中に、1人の俳優が詩のようなテキストを朗読する間、もう1人の俳優が喋らず身体で表現をするシーンがありました。その時に見た静かな熱と充満する集中・情報を忘れられません。
ぺぺぺの会の初期に宮澤が書いた詩を演劇にしていたこともあり、『悲円 -pi-yen-』の冒頭には詩があります。物語のあらすじのようであり、読む人の行先を示す地図のようでもあり、物語の後の登場人物の手記のようでもある「冒頭詩」は、2025年の東京公演時には上演されておらず、開演前に朗読されることで観客に届けられました。
私はその上演に、別の選択肢があったのではと思い、使用するテキストに「冒頭詩」を指定して、私道さんにWSをお願いしました。
WSを受けてみて、俳優の自由度を高めつつ、個人やチームが行った選択を認め、その面白さを強化するために指示を出していく私道さんのディレクションが印象的でした。
そして、参加してくださった人が言葉を音にしたり、体で形にしたりして、面白がってくださるたびに、『悲円 -pi-yen-』の冒頭詩も喜んでいるような気がしました。
どんな冒頭詩の上演にするかは、これから稽古を重ねて考えていくところではありますが、上演するたびにその詩が喜んでくれるような公演ができたら良いなと、上演の根本的な良いあり方に気付かされました。
レペルアップ企画をすることで、稽古をしているだけではわからない出演者の意外な一面が見え、チームビルディングに役立ったり、短期的に同業者と深い協働を図れたりして今後の創作に繋がるなど、かなり良いことが沢山あったので、他団体のみなさま、かなりオススメです。
↓
Lv。UP 〈戯曲編〉
8月実施
↓
Lv。UP 〈演出編〉第三弾
10月実施
Co-program2025 カテゴリーA 採択事業
新NISA批評演劇『悲円 -pi-yen-』関連企画
企画・製作:ぺぺぺの会
主催:ぺぺぺの会、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)
0コメント