2022年12月 ぶいの「ぺ」公演 『斗起夫 ―2031年、東京、都市についての物語―』

『斗起夫 ―2031年、東京、都市についての物語―』



世界を、広く、大きなものにしていく——

世界を主体的に生き抜くために、行動を起こし続けることを選択した斗起夫は、父が死んだ日に「運命の人」とめぐり逢う。ぎこちない不自然なコミュニケーションが、人間同士の溝を深め、やがて過去のトラウマを喚び起こす。そして、彼はあることを決意するだろう……。オリジナル小説から産み落とされた精確な筆致、言葉の数々。ぺぺぺの会、渾身の傑作長編。




1年がかりでつくってきた作品がまもなく上演されます。

この作品は、最初私がひとりで小説の形式にして書いて起こし、8月のワークインプログレスで、8人の俳優に協力してもらいながら、小説は戯曲になりました。
戯曲をリーディングするのを同世代の劇作家・演出家である神保さん、中島さん、三橋さんにご鑑賞いただいて、その後の座談会では、『斗起夫』に関することも、また創作一般にまつわるようなことも、さまざまな意見交換がおこなわれ、大変充実した時間を過ごすことができました。

私は、ワークインプログレスでのリーディングと座談会を経て、この作品をさらに良いものにしていくための手がかりを確かに手に入れました。
ワークインプログレス後、9月〜10月にかけては、戯曲に対してラディカルな手入れをすることを厭わず、新バージョンの戯曲(上演台本)を作成しました。

手がかりがちゃんとした形になった瞬間でした。


私は、この『斗起夫』という物語をつくるにあたって、いくつかの犯罪的事例についてをリサーチしました。
リサーチを重ねていくうちに奇妙な感情が自分のなかで湧き起こってくるのを感じました。自分も、なにかの拍子に、もしかしたら加害者と同じ行動をとってしまうことがあるのではないか、または、自分の家族や友人が加害者になってしまったとき、私にはなにができるだろうか、と多少ノイローゼ的な考えをめぐらせながら、私は斗起夫のかわりに、斗起夫の言葉を書き連ねていきました。

報道は、それがマスメディアに向けられたものであればあるほど、被害者の被害を深刻に伝え、加害者を「悪」で塗り潰そうとします。

私が、この『斗起夫』を通してやりたいことは、多くの加害者と被害者とを生んでしまう社会の構造を劇空間にそのまま引き出す、ということです。

そのまま引き出すために私は、過去→現在→未来というふうに流れていく直線的な時間軸とは別のかたちで、この物語を編んでいこうと決めました。社会に充填されている「空気」のようなものを表現するには別の時間軸、つまり人間の記憶に基づいてストーリーテリングしていく必要があると考えたからです。


斗起夫は、どうしても引いた視点から物事を見てしまって、それが原因で自分は人生を愉しみきれないのだということを自覚します。そして主体的に、行動することを心掛けるのですが、引いた視点で物事を分析したり、自分自身を監視したりすることからはどうしても逃れることができません。

インターネット、SNS、AI時代の社会と個人のありかた。急速に変化を遂げていくテクノロジーと裏腹に、変わりきれない人間性。人間性を失われつつあるものとして描くのではなく、変わりきれないゆえに問題が生じるのだと、ある意味ポジティブに提示する強度が、『斗起夫』という作品には具わっています。

今、この上演台本をつかって、俳優とスタッフと、12月の本番に向けて準備を進めているところです。そうやって多くの人の視点や力を結集していくなかで、この作品はどんどんと良いものになり続けています。

ぺぺぺの会の代表作といえるような作品=傑作をつくる、という闘志の炎はめらめらと燃やしつつも、このメンバーで創作していくこと自体のプロセスを噛み締めて、愉しもうと思う今日この頃です。

宮澤 大和


● 公演情報


【作・演出】

宮澤大和


【出演】

石塚晴日、佐藤鈴奈、熊野美幸、新堀隼弥(以上、ぺぺぺの会)
飯尾朋花(いいへんじ、山口綾子の居る砦)、宇田奈々絵、小澤南穂子(いいへんじ、山口綾子の居る砦)、小池舞、小林彩、瀧口さくら、中荄啾仁(劇団夜鐘と錦鯉)、はぎわら水雨子(食む派)、松浦みる(いいへんじ/青年団)


【スタッフ】

舞台監督:今泉馨 (P.P.P.)、児玉恒士(P.P.P.)
照  明:緒方稔記 (黒猿)
音  響:谷脇南美
作  曲:杉浦未来 (れとろみらい)
映  像:杉浦未来 (れとろみらい)
衣  装:目黒ほのか
宣伝美術:羽田朱音
制  作:石塚晴日、佐藤鈴奈

広  報:熊野美幸

演出助手:新堀隼弥


【公演日時】

12/28(水) 12:00●① / 18:00
12/29(木) 12:00●②/ 18:00
12/30(金) 12:00 ★

●:ゲストをお迎えしてアフタートークを行います。
①神保治暉さま(エリア51)、三橋亮太さま(譜面絵画/青年団演出部)、中島梓織さま(いいへんじ)
②松本一歩さま(平泳ぎ本店) 

★:年越しイベントを開催いたします。

上演時間は2時間45分を予定しております。(途中休憩込み)

【場所】

北千住BUoY


【チケット】

一般       3500円
U-30(30歳以下)3000円
学生       2000円
高校生以下    500円





● 俳優たちのエッセイ「自分の役について」

斗起夫・・・・・・新堀隼弥(ぺぺぺの会) 

平岡・・・・・・はぎわら水雨子(食む派)

ムギ・・・・・・小池舞

リリィ・・・・・・宇田奈々絵

ますみ・・・・・・熊野美幸(ぺぺぺの会)

百合・・・・・・松浦みる(いいへんじ、青年団)

博士・・・・・・中荄啾仁(劇団夜鐘と錦鯉)

ミキ・・・・・・小林彩

アロハ・・・・・・飯尾朋花(いいへんじ、山口綾子の居る砦)

ジャム・・・・・・瀧口さくら


十和田・・・・・・小澤南穂子(いいへんじ、山口綾子の居る砦)


わらび・・・・・・石塚晴日(ぺぺぺの会)

ナナちゃん・・・・・・佐藤鈴奈(ぺぺぺの会)



● けいこばツアー

12月に上演される、『斗起夫 ー2031年、東京、都市についての物語ー』の稽古場を、だれでも・ いつでも・お気軽に、見学することができます。※終了しました。

詳しくはこちら☟



● 斗起夫 ワークインプログレス

オリジナルの小説『斗起夫』をおよそ半年かけて、戯曲化し、演劇として上演します。

8月にはその第一段階として、戯曲化のプロセスをおこないました。


ワークインプログレスの座談会の様子も公開中です!

~ゲスト~

神保治暉(エリア51)さま

中島梓織(いいへんじ)さま
三橋亮太(譜面絵画/青年団演出部)さま

詳しくはこちら☟